S&P 500 を代表とする米国株(米国株式インデックス全体を含む)が、今後も値上がりする可能性が相対的に高い理由を記載しました。
1. 経済成長と企業収益の拡大が長期の原動力
最も基本的な前提として、株価(特にインデックス株価)は、企業の収益力(利益)と将来期待の掛け目(株価収益倍率:P/E 等)によって決まります。すなわち、長期的には「企業の売上・利益の拡大」が値上がりの土台となります。
米国企業は、国内需要だけでなく、世界各国を対象市場として事業展開しており、国境を超えた売上拡大の可能性があります。さらに、技術革新や効率化投資を通じて、同じ売上でもより高い利益率を実現できる構造を築ける企業が多く含まれています。実際、米国企業の研究開発(R&D)投資が長期的に業績と正の相関を持つという実証研究もあります。
また、インフラ、健康・医療、デジタル化、エネルギー転換などの分野で技術変革が進展すれば、それを取り込む企業群が新たな成長ドライバーになります。
2. イノベーション・技術進歩の加速が割高期待を支える
近年、人工知能(AI)、クラウド、量子コンピュータ、バイオテクノロジー、クリーンエネルギー、半導体などの先端分野への投資が急速に拡大しています。これらの技術トレンドが米国企業の競争優位性を後押しする可能性があります。
たとえば、JPMorgan や他の金融機関の分析でも、AI を中心とした技術基盤の構築が、企業の効率性を引き上げ、株式市場の成長を支えている、との指摘があります。また、インデックス全体においても、技術・通信セクターが比重を高めているという観点から、技術イノベーションがインデックスの上振れ要因となる傾向が見られます。
要するに、高成長を見込める個別分野が全体インデックスを引っ張る「重し」ではなく「エンジン」になり得るわけです。
3. 利益率・コスト構造の改善余地
米国企業は比較的資本市場やコーポレートガバナンス制度が整っており、資本効率・コスト管理・規模の経済を効かせやすい構造を持つ企業が多くあります。これらが利益率の拡大余地を生む可能性があります。
また、企業間競争が激化する中で、デジタルシフト・自動化・ソフトウェア化が進んでおり、固定コストを抱えやすい伝統セクターより、付加価値で差異化できる企業が有利になる可能性があります。
上述の Bridgewater の研究では、近年の米国株アウトパフォーマンスの要因として、売上成長・利益率拡大・株価倍率上昇(マルチプル拡大)が均等に寄与していたという分析も出されています。
4. 株主還元政策(自社株買い・配当)の積極性
米国企業は、利益を株主へ還元する仕組み(配当・自社株買い)が比較的活発です。特に自社株買いは、発行済株式数を減らすことで、一株当たり利益(EPS)を押し上げ、株価を支援するメカニズムとして働き得ます。
このため、たとえ利益成長が穏やかでも、株主還元を通じて株価が底上げされる可能性もあります。
5. 資金流入の構造的優位性
米国株式市場(特に S&P 500 に代表される大企業群)は、世界の資金が集中しやすいハブ的な性格を持ちます。機関投資家・年金基金・海外投資家がポートフォリオの一部として米国株を保有するケースが非常に多く、世界中の資金動向にさらされやすいという特徴があります。
加えて、指数連動型のファンド(ETF やインデックスファンド)は多くが米国株式中心であり、世界中の資金流入が相対的に米国株へ向かいやすい構造になっています。こうした構造的な資金トレンドの優位性は、価格バッファとして作用することがあります。
6. 分散とシステミックリスク耐性
S&P 500 のようなインデックスは、個別企業・個別セクターに依存しすぎないように分散されています。すなわち、一部の企業が失速しても、他の成長企業が補う可能性があります。インデックス投資はこのような分散効果を取り込みながら、成長機会を享受できる点が強みです。
また、米国市場には流動性が高い銘柄群が豊富で、売買のしやすさ・資金調整のしやすさの面でも優位です。この流動性は価格変動時のショック吸収力にもつながります。
7. マクロ環境と政策支援の可能性
米国中央銀行(FRB)の金融政策や政府の産業政策・イノベーション支援などが、株式市場に追い風をもたらすケースがあります。たとえば、金利引き下げ期待や財政出動、減税政策、研究開発投資の支援などは、企業収益拡大や投資マインド改善の要因となります。
なお、現状では長期金利上昇リスクや金融政策による抑制の懸念もありますが、適度な金利引き下げや緩和政策が実現すれば、グロース寄りの銘柄にはプラス材料となる可能性があります。
8. 実績と過去の傾向からの示唆
過去数十年を通じて、米国株式市場は多くの場合、主要な景気後退や株価調整局面を乗り越えて上昇軌道を辿ってきました。歴史的には「長期保有(buy-and-hold)」戦略を取った投資家は、時間をかけて値上がり益を享受してきた例が多数あります。
もちろん過去実績が未来を保証するものではありませんが、これらの傾向は、なぜ多くのアナリストが米国株に依然として成長ポテンシャルを見ているかの根拠の一部です。
リスク・留意点とバランスの視点
ただし、将来の上昇を論じる上で、以下のリスク要因にも注意が必要です:
- 金利上昇・インフレ加速リスク:金利の急激な上昇やインフレ圧力が企業コストを押し上げ、バリュエーション(P/E)を縮小させる可能性があります。
- 評価の過熱・バブル危険性:人気銘柄や成長株への過度な投資集中が「過剰期待」を生み、逆回転リスクを高めることがあります。
- グローバル競争・地政学リスク:技術覇権競争、貿易摩擦、地政学リスクなどが米国企業の国際展開や利益率に影響を与える可能性があります。
- 規制・税制変化リスク:特にプラットフォーム企業や巨大ハイテク企業は、規制強化・税制改正の対象になりやすく、これが業績や収益構造に影響を及ぼす可能性があります。
したがって、米国株全体(インデックス)への投資を考える際には、適切なポートフォリオ分散や資産配分、リスク管理を念頭に置くことが重要です。
まとめ
S&P 500 を代表とする米国株が将来も値上がりする可能性が高いと考えられる理由を整理すると、以下のようになります:
- 経済成長と企業収益拡大の構造的基盤
- 技術革新・イノベーションの加速
- 利益率改善余地とコスト構造の優位性
- 株主還元政策(自社株買い・配当)の積極性
- 世界的資金流入という構造的後押し
- 分散性と流動性による耐性
- 政策支援・マクロ環境との整合性
- 過去の実績と長期傾向
これらを総合すると、米国株には成長ポテンシャルを支える「複数の追い風」が備わっていると評価できます。ただし、リスク要因も無視できないため、適切なリスク管理のもとで投資を検討すべきです。
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