今回の書籍は生命保険の不都合な真実です。著者は朝日新聞の記者の方です。日本の伝統的な保険会社は銀行などと同様社会的信用が高い企業です。多くの日本人がその社会的信用を信頼して生命保険などに加入しています。私の親の世代では支払総額の2倍の返戻金が支払われる貯蓄性保険もあり、財産形成するなら保険は有効な手段の1つと認識されていました。しかし、昨今の経済情勢の急激な変化で保険会社自体も利益を上げられなく苦しんでおり、そのような状況で保険会社自身が生き残るために被保険者の利益を犠牲にしているような事実があるということがこの本を読んで理解できました。保険会社は被保険者の利益を保護してくれる企業だと理解しているのであれば、私たちのその認識を修正して、保険会社との付き合い方を見直す必要があるかもしれません。印象に残った点を記載していきます。
①被保険者が納める保険料は純保険料と付加保険料に分類される
被保険者が納める保険料は純保険料と付加保険料というものに分類されます。純保険料は被保険者に支払われる保険金に充てらるものです。一方付加保険料とは保険会社が事業を続けるうえで必要だとあらかじめ想定した費用で新規契約を獲得するための人件費、テナント代、広告販売費などに充てられるものです。純保険料は被保険者の保険料支払いに充てられるから良いとして付加保険料は被保険者にとってメリットがないものです。なぜならすでに契約している被保険者にとって保険会社が新規契約を獲得したからと言ってなんら利益はありません。通常、生命保険に加入する場合、保険会社から保険料に対する純保険料と付加保険料の内訳など示すことはなく、保険契約者は自動的にこの付加保険料を支払っているということを理解しておくことが重要だと思います。生命保険会社はテレビコマーシャルで有名人を使ってかなり派手に保険商品について広告していますが自分の保険料がこの宣伝広告費に使用されていると思うとあまり、支払った保険料の意味があるのかと個人的には考えてしまいました。
②保険会社は保険契約の見直しを望んでいる
多くの保険会社はバブル期に高利率の貯蓄性保険を販売しており、その契約はまだ残っています。バブル期は保険会社が被保険者から預かった資金を運用する際、高利回りの金融商品で運用できたため被保険者に対して払込金額の2倍などの返戻金を支払うことができていたようですが近年は世界的に低金利となっており過去に比べて預り資産を効率よく運用できなくなっているようです。日本はその中でも群を抜いて低金利時代が続いています。加えて日系の生命保険会社は過去のしがらみなどで日本国債を大量に購入しておりその日本国債の利回りも低いものになっています。つまり預り資産の運用利回りよりも高い利回りで販売してしまっている過去の保険商品があり逆ザヤになっている契約を保険会社は抱えているようです。このような状況を解消するために保険会社は定期的に保険契約者のもとを訪れてライフスタイルに合った保険契約の見直しを提案してくるケースがあるようです。被保険者にとっては従来の保険商品を契約し続けた方が良いが保険会社にとっては逆ザヤの契約となっておりここに保険契約者と保険会社との利益相反が発生します。金融商品に詳しくない高齢者などは保険会社の担当者を信用して従来の保険を解約して条件の悪い保険に乗り換えさせられるケースもあるらしくこの点は注意が必要です。このように保険会社は私たち保険契約者の味方だと考え、信用しすぎると損をしてしまうケースがあるということを私たちは理解しておく必要があるでしょう。
③乗り合い代理店の販売姿勢
従来の保険会社の販売方法は生保レディという保険会社独自で雇用している営業職員に契約者の職場などに訪問して新たな顧客を紹介してもらう方法が主流でした。しかし職場の環境変化などでそのような営業方法はだんだん、有効ではなくなってきており、現在は保険を購入したい人が複数の保険会社の保険商品を比較できる乗り合い代理店を経由した販売方法が主流になっています。複数の保険会社の商品を比較して自分に合った保険を選択できるという点でメリットがありそうですがここにも注意する点があります。乗り合い代理店に対して保険会社がインセンティブ(成功報酬)を出しているケースがありこのようなインセンティブが出ている場合、乗り合い代理店の担当者は保険契約者にとって最も良い保険商品を提案するのではなく、最もインセンティブが獲得できる保険商品を提案しようとする動機が発生します。しかしインセンティブが最も多い保険商品がかならずしも保険契約者にとって最適な金融商品であるとは言えず、保険契約者は乗り合い代理店の担当者ということで安易に信用するのではなく自分の頭で考えて最適な保険商品を決定することが重要なのではないかと感じました。
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