近年、地政学リスクやインフレ懸念を背景に金相場が高騰し、金投資への関心が高まっています。実際、World Gold Councilのデータでも、個人投資家による金ETFや現物購入の増加が報告されています。しかし、長期的な資産形成という観点では、金投資よりもインデックス投資の方が優位であると考えられます。その理由を整理します。
第一に、期待リターンの差です。金は利息や配当を生まない資産であり、保有しているだけではキャッシュフローを生みません。一方、株式インデックスは企業活動の成長に裏付けられた収益を反映します。たとえば、米国市場全体に投資するS&P 500は、長期的に年率7〜10%程度のリターンを記録してきました。これは企業の利益成長と配当再投資による複利効果の結果です。金価格も上昇する局面はありますが、長期平均では株式ほどの実質成長力はありません。
第二に、複利効果の有無です。インデックス投資では配当を再投資することで「利益が利益を生む」複利の力が働きます。これは長期投資において決定的な差を生みます。仮に年率7%で運用できれば、約10年で資産はほぼ倍になりますが、金は価格上昇がなければ資産は増えません。インフレヘッジとしての役割はあるものの、資産拡大という目的では構造的に不利です。
第三に、経済成長との連動性です。株式インデックスは経済全体の成長を取り込みます。世界経済が拡大すれば企業利益も増え、指数も上昇する傾向があります。たとえば世界株式に分散投資するMSCI World Indexは、複数国の成長を取り込む仕組みになっています。一方、金は実体経済の成長そのものから直接的な恩恵を受けるわけではなく、不安や危機時に買われやすい「守り」の資産です。
第四に、機会費用の観点です。金の価格が横ばいで推移している期間に、株式市場が大きく上昇することは珍しくありません。歴史的に見ると、長期の資本形成において最大のリターンをもたらしてきたのは株式です。ノーベル経済学賞受賞者のEugene Famaが提唱した効率的市場仮説の観点からも、市場全体に低コストで分散投資する戦略は合理的とされます。
第五に、コストと流動性です。インデックスファンドやETFは信託報酬が極めて低く、売買も容易です。金の現物保有には保管コストやスプレッドが発生します。金ETFも存在しますが、長期的な資産成長という点では株式インデックスETFの方が合理的です。
もちろん、金にはポートフォリオの値動きを安定させる効果があり、一定割合の保有はリスク分散に寄与します。しかし「資産を大きく育てる」ことを目的とするならば、企業の成長と複利効果を享受できるインデックス投資の方が理論的・実証的に優位です。したがって、金は補完的資産として位置づけ、資産形成の中核はインデックス投資とする戦略が合理的であるといえるでしょう。

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