【どっち】日本株?米国株?

投資

日経平均株価が過去最高値を更新したことは、国内外の投資家にとって象徴的な出来事です。2025年9月には日経225が45,000台を突破し、複数回にわたって史上最高値を付ける局面が観測されました。これは長年続いた「失われた30年」的なイメージからの脱却を示す一方で、単に指数が高値圏にあることだけでは将来の高成長を保証しない点にも注意が必要です。

過去30年間(概ね1995年〜2025年)の株価の動きを概観すると、日経225と米国の代表的指標であるSP500には明確な差が見られます。日経225は1990年代末から2000年代を通じて低迷や乱高下を繰り返し、2010年代前半にかけては世界的な株高の波に乗り遅れる時期もありました。一方、SP500はITバブル、リーマン・ショック、コロナ・ショックといった大波はあったものの、長期的にはテクノロジー関連を中心とした企業の急成長や利益拡大により大きな上昇を遂げています。

数量的な比較を簡潔に述べると、1989年のバブルピーク以降の日経225の「価格リターン」は長期間ほとんど横ばいに近く(配当を含めたトータルリターンでも限定的な伸びにとどまる期間が長かった)のに対し、SP500は過去数十年で数倍〜十数倍の伸びを記録しています。専門機関の分析でも、同じ長期期間で見たときにSP500のトータルリターンが日経を大きく上回ってきたことが示されています。

なぜこの差が生じたのか――主要因を整理すると、大きく三点が挙げられます。第一に「産業構造とイノベーションの違い」です。米国はIT、ソフトウェア、プラットフォーム、半導体といった高成長分野の企業が相次いで台頭し、利益率・投資回収が高かったため株式市場全体を押し上げました。第二に「企業統治と資本政策の違い」です。近年の日本企業は配当や自社株買いの拡充などで改善が見られるものの、長期にわたる内部留保重視や株主還元の不足が株価パフォーマンスに影を落としてきました。一方、米国企業は株主還元や積極的な資本配分で株主価値を高める傾向が強かったのです。第三に「マクロ要因(人口・成長期待・為替・金融政策)」があります。日本の人口減少・高齢化は国内市場の伸びを抑えがちであり、長期の実質成長期待が相対的に低かったことが株価の低迷要因の一つとなりました。

しかし、ここで重要なのは「過去の成績が将来を完全に決めるわけではない」という点です。日経が史上最高値を更新した背景には、企業業績の改善、ROE(自己資本利益率)の向上、配当政策の見直し、そして銀行や年金など大口保有者の資産配分変更といった構造的ポジティブ材料が含まれています。また、日銀の金融政策転換や為替の変動も株価に影響を与えており、これらが続けば日本株にとって追い風となる可能性はあります。

それでも長期投資の観点から「成長の可能性が高いのはどちらか」を問われれば、歴史的データと構造要因の蓋然性(probability)を踏まえ、SP500の方が依然として高い成長ポテンシャルを持つと結論づけるのが妥当です。理由は次の通りです。第一に、米国には高付加価値の成長産業が多数存在し、今後もグローバル需要の拡大に伴って利益成長が期待されること。第二に、米国資本市場は新規事業の資金供給やM\&Aの活発さ、株主還元を通じた資本効率改善で企業価値が伸びやすい構造にあります。第三に、世界全体の経済・技術トレンド(クラウド、AI、半導体、バイオなど)が米国中心に回る期間が続けば、S\&P500のリターンにとって追い風になる可能性が高いことです。これらは過去30年の結果が示唆する傾向とも整合します。

とはいえ、日本株にも魅力的な投資機会は増えています。バリュエーション(割安感)、改善しつつあるコーポレートガバナンス、そしてグローバル化で海外収益が増える企業など、総合的に見れば分散投資の観点から日本株を無視するべきではありません。投資家は「成長性(リターン期待)」と「リスク(政治・為替・人口動態)」、さらに自分の投資目的や期間を照らし合わせて、日米の資産配分を検討するのが合理的です。

日経平均が過去最高値を更新したことは日本市場の重要なマイルストーンであり、短中期的には強気の材料です。しかし、過去30年の推移と産業・資本市場の構造を踏まえると、長期的に「成長の可能性が高い」と見なせるのはSP500であるという判断に合理性があります。投資判断を行う際は、過去のデータと現在の構造的変化を併せて評価し、分散と時間軸を持ったポートフォリオ設計を心がけることをお勧めします。

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